精神障害を理由に議会傍聴・保育所利用を制限
ベーテルブログ：えー、知らなかった 2024/03/04
① 樋口岳大．精神障害理由に制限333件、議会傍聴・保育所利用、自治体・公的機関−市民団体．毎日新聞、2024年３月４日、１面．
② 樋口岳大. 傍聴制限−「精神障害、もっと知って」、市民団体−根強い偏見、社会に．毎日新聞、2024年3月4日、23面．
このブログには花ブログ、この一冊、この一言ありがとうなどがあったが、タイトルには「今週の」が付いたりの欲張りや、加えて「えー、知らなかった」もある。ブログのテーマは徐々にゲンパツがせり出したが、時間を割けなくなり、この2年は大部分が強制不妊情報を見逃さないように努めてきた。そんな中、今回は久方ぶりに「えー、知らなかった」だ。
すごい記事だ。精神障害者に対して地方自治体議会で傍聴が制限されているという調査活動報告が、新聞紙面の一面に、しかもトップ記事に上がっている。毎日新聞がすごい。きっと編集長が偉いし、よく通した。記者世界ではそういう分類としないだろうが、当方からみれば特ダネに見える。記事の内容は障害者差別禁止法に直結するし、調査活動も対地方議会の有り様の虚を突くのに成功しているもようだ。先走るが、そうもうまく行くことだってあるのだと拍手喝采したい。
1991年に地方、静岡の市民が気づき、すぐさま精神障害者への社会的行為制限に関する地元静岡県内での条項撤廃を申し入れ始めた。記事では国、当時自治省、現総務省が全国自治体への見直しをすぐにか通知したとある。世の中では、2014年に国際的には国際障害者権利条約が批准され、日本も珍しく参加した国の一つである。2022年の条約履行状況の国連審査については、このブログでも触りを、また仙台てんかん市民会議SCAPEでは日本障害者協会藤井克徳さんから詳しい講義を賜った。一方、国内的には2016年に障害者差別禁止法が制定され、障害者処遇の内実はともかく、現在の日本のあり方の表向きは建前を変えてきている。
さりながら、地方の市民、この場合「心の旅の会『市民精神医療研究所』」の寺沢暢紘さんは、2022年6月に秋田県の市町村議会に精神障害者の傍聴制限が残っていることを発見し、事務局を務める心の旅の会は即応して同年６月、７月に全国調査を行ったとのこと。その結果に呼応したのか、半年後、文部科学省や総務省は是正通知を行ったそうだ。知られた460件の6割弱の地方自治体は即応したようだが、新たに140件が発見され、おそらく都合333件が、おそらく、想像では「ふうてん者（精神状態が正常ではない人）、精神病者と認める者は傍聴を許さない」、「精神障害者で泥酔者等で、公務を妨害し、または他人に迷惑をかけるもの」などという、概念規定と呼べる代物ではない俗用語、今では亜型の差別用語と言おう、が、未だに法や条例中に罪深く居座っている。
今回の記事は地方自治体レヴェルの調査だ。その中で、よくお調べになったもので、警視庁情報が短く紹介されている。東京都ですらそうなのか。庁舎への立ち入り禁止だ。立ち入れば「公務」執行妨害になるか、他人に迷惑をかけるとされる。公務という代物は執行される側には余りに曖昧なものだ。
解説者の八尋光秀弁護士はコメントする。制限条項が残ってきたのは「うっかりしていた」では済まされない、精神障害者の存在や当事者の悲しみに社会が目を向けてこなかった結果だ、と。
うっかり忘れとすると、当方のような悪ガキが議会を傍聴しようとしても許されることはないだろう。私は許されずともよいが、議会事務局には、せめて障害がある人にはお茶でも差し上げてでも一人でも多くの傍聴を募るぐらいの勢いがあってよい。
さて、寺沢さんにお尋ねしたいですね。てんかんが明記された条文や条項はあったのでしょうか。
この記事をてんかんの立場からみると、この記事は精神障害者を差別する条例、条項、規程の情報を伝えてきている。てんかんは古式蒼然と三大精神病の一つであり、てんかんの国家認識の基本は未だに変わってはおらず囚われており、主管轄も精神保健行政にある。てんかんへの差別問題は重大な課題だが、現代てんかん学ではますます地味な課題の一つだ。研究者に益は少ない。
さて、際立つ症例になかなか遭遇できないが、てんかんであることが阻害となる各種資格取得制限などの実情もあらためて調べる必要があるよと、この記事は警告しているように思われる。
（Drソガ）
① 樋口岳大．精神障害理由に制限333件、議会傍聴・保育所利用、自治体・公的機関−市民団体．毎日新聞、2024年３月４日、１面．
② 樋口岳大. 傍聴制限−「精神障害、もっと知って」、市民団体−根強い偏見、社会に．毎日新聞、2024年3月4日、23面．
