強制不妊−大法廷任せに
首相、政府、国会は被害者に同情なし
ベーテルブログ2023/11/02
① 石橋英昭.僕は存在しなかったのかもしれない、強制不妊訴訟に重ね、たどった両親の人生−社会に残る優生思想と向き合う、母と父がろう者の作家・五十嵐大さん.朝日新聞、2023年10月31日、19面.
② 河北新報.強制不妊−大法廷で審理を、最高裁−来年にも5件に統一判断.2023年11月2日、22面.
③ 遠藤浩二.強制不妊国賠−統一判断へ.最高裁−5訴訟、大法廷回付.毎日新聞、2023年11月2日、24面.
たまたま朝日宮城版が作家五十嵐大さんによる強制不妊を巡る側面をまた別の視点の取材を物語っていた。「母冴子さん(69)は父浩二さん(69)はともに耳が聞こえない。五十嵐さんは子どものころ、それが嫌で嫌でたまらなかった。。。。。。。。。ろう者の夫婦が起こした裁判もあった。五十嵐さんは衝撃を受けた。一歩間違えば母も父も、子どもを作れない体にさせられていた。僕は国によって、生まれる前に「殺されていた」かもしれない。モヤモヤは恐怖に変わった」。
五十嵐さんは強制不妊の裁判や傍聴や旧優生保護法の勉強への参加を重ね、今年5月「聴こえない母にキキに訊きにいく」(柏書房)を出版した作家五十嵐大さんのコメントは、「(大阪や東京で原告勝訴だったが)各地の控訴審で判断が分かれており(仙台と札幌二つ目で原告敗訴したことを指す)、当事者達の闘いは最高裁まで持ち込まれそうだ」と述べている。10月25日に仙台での二つ目の控訴審で原告勝訴を得た直後のコメントだ。流れは最高裁の話題に変わってきている。
たまたまにTBS系が11月1日に「旧優生保護法の不妊手術をめぐる国家賠償請求、最高裁大法廷で審理へ、2診は被害者側が逆転勝訴4件相次ぐ」の見出しで、最高裁第1小法廷は11月1日に5件(6月1日の仙台判決までの5件)の上告審について、全15人の裁判官による大法廷での審理を決めたことを伝えてきた。その翌日の記事が②河北新報版、③毎日新聞版である。大法廷での審理は、重要な憲法判断や判例変更などの際に開廷されるものらしい。2018年1月31日から始まった強制不妊裁判は既に6年を超えようとしており、提訴者は高齢で既に亡くなった方もおられ、高裁判決で原告勝訴が積み重なっても、どの裁判もおのおの単独で最高裁まで上告審を経なければならない。とすると、当然時間だけが空しく過ぎ、国家による稀に見る残虐としての犠牲者被害者にはなかば野垂れ死にの憂き目が待っているだけだ。だから弁護団は勢い急ぐわけで、流れから控訴での原告勝訴を重ねての意味がなくなるため司法判断ではなく政治決着に弾みがつくように願っているというのが正直な本音のようだ。前回記したように除斥期間の適用を国が「権利の乱用」とし、提訴時効を適用するとした踏み込んだ10月25日の仙台高裁判決内程までに事態が好転するような楽観はないであろう。なお、10月25日の仙台高裁判決は対象となっていない。
事態はむしろ早期決着なのだが、紙面からは来年にも統一判断(全15人による)が見通しとある。なお来年のいつなのかは読み取れない。肝腎の政府、厚労省大臣は顔と声が見えないし、首相に他人に優しいという噂がないので。(Drソガ)
① 石橋英昭.僕は存在しなかったのかもしれない、強制不妊訴訟に重ね、たどった両親の人生−社会に残る優生思想と向き合う、母と父がろう者の作家・五十嵐大さん.朝日新聞、2023年10月31日、19面.
② 河北新報.強制不妊−大法廷で審理を、最高裁−来年にも5件に統一判断.2023年11月2日、22面.
③ 遠藤浩二.強制不妊国賠−統一判断へ.最高裁−5訴訟、大法廷回付.毎日新聞、2023年11月2日、24面.