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2023/03/31 強制不妊裁判: 大阪高裁上告(国が被害者に不服)は2023年4月6日 仙台高裁判決は2023年6月1日

2023/03/31

強制不妊裁判:

大阪高裁上告(国が被害者に不服)は202346

仙台高裁判決は2023年          6月1

 

   大治朋子.「本当の人間になる」.毎日新聞、2023328日、2面、火論.

   大治朋子. 「法の下の平等」を問う. 毎日新聞、2022年3月1日、2面、火論.

   荒中(日本弁護士連合会会長).東京地裁判決を受けて改めて旧優生保護法被害者の被害回復を求める会長声明.Nichibenren.or.jp2020715日.

   荒中(日本弁護士連合会会長).旧優生保護法国賠訴訟の大阪高裁判決を受けて一時金支給法の見直しを求める会長声明.Nichibenren.or.jp2022年3月3日.

 

ベーテルブログ2023/03/31

 

見覚えのあるお名前だと思いながら、見出し語「本当の人間になる」というありふれた普通、つまり魅力的ではない第2面の筆頭を飾る記事でどんな異見かなと、ついつい字面を目が泳いだ。文中には優生保護法とあり当然に目が探し始めた。1年前に同じ欄に彼女の名がある。旧優生保護法の東京高裁判決は2022年の311日にあった。国に損害賠償を命じた222日の大阪高裁の控訴判決に東京が続いた日だ。ベーテルブログ、今週のこの記事一つ2022-0329)−315日付けは、3月1日の毎日新聞での「火論」欄に彼女の短稿を紹介したのだ。「国の上告期限は(2022年)38日。だから、彼ら国は上告したことになることを、当ブログ、今週のこの記事一つ20220228)で伝えた。今回の(2023323日の大阪高裁の原告勝訴)判決に国が異議を唱えれば−やはり障害者は差別され、十分に救済されることもない−という日本社会の集合的記憶はさらに強化され、その『経験知』は未来へと受け継がれるだろう」とした。彼女の言葉を裏返して見れば、この国はそうであるような国ではないと読めば、更に分かる。専門記者さんなので当方好みに読みは深かろう。「この国の差別社会の集合記憶」を、皆が全く記憶にない、とする否定語とできる。同じく、その『経験知』とは経験をすっかり忘れるという否定語として、当方が興味深い用語だとすれば、文脈はすっきりと辿れる。

今回、彼女は新たに神戸地裁判決を覆した大阪高裁の新たな判決を紹介している。この判決は当ブログでも紹介したばかりだ。彼女はあらためて言葉を重ねている。「人類史上類を見ない人権侵害を見過ごし、黙認してきた私たち市民の課題でもある」と神戸弁護団の言葉を伝えながら、ありがたい情報となる国の上告期限は4月6日と教えてくれた。そうか、4月6日なのだ。だから、彼女は328日という与えられた指定日に強制不妊を記事にした。あまり日がない。私たち市民社会を「本当の人間」の社会にするためにも国は上告を断念すべきである、と叫ぶ。

 実は2018131日に始まった仙台での裁判闘争に関わる仙台高裁での判決が61日にあることを確かめた。5年ぶりに、隊列に加われるように休診を仕組みたい。しがない開業医が自ら休むことは何年に一度もない。まして今年は最悪のタイミングで、6月頼れる神経科医達の全国神経学会開催に当たる。まして、アメリカの抗てんかん薬新薬と技術開発会議AEDD-XVII(ETDD)とも重なり身動きは採れない。開業医が休めるのは死んだあとしかない。そんななか、国が大阪高裁判決に国が上告する期限は46日というのだ。ましてその後の6月1日の仙台判決は重大な結節点の一つであっても、地方の個別案件ながら直接ではなかろうが間接には少々の影響を受けるであろう。

深い悲しみが前提の仙台高裁に向かいたい。国の上告、つまり、しつこく、しつこく指摘してきた、国のコメント、「関係省庁で検討」してきた結果を知りたい。それら検討結果が彼らの上告断念の場合となろうとも、全ては曖昧になり、「黒塗り」となる。黒塗りは被害者には暗黒の焦土となる。国刑強制不妊のつぶさな資料を焼きつくさないで、と祈っている。焼きはしないがすべて塗りつぶすしか仕事がない「関係省庁の検討」とならないよう、彼らに最後も塗りつぶさないよう、祈る。

 彼女に問おう。私たちは市民社会を形成しているのだろうか、と。否である。強制不妊手術を許した社会はそのまま美しい市民社会になれるはずはない。裁判勝訴は新しい市民社会を約束するものではない。

弁護団関係者と超党派議連とが頑張って折衝しているとの情報がある。とどのつまりはいわゆる政治的決着なるものものもあり得るのだろう。心から祝えるかは分からないが、被害者には長年の悲痛以外の何ものなかったのだから。市民社会は政治的決着によって成熟するのだろうか。勝たなければ地獄のままだが、仮にいかなる形であれ裁判に勝ったとしよう。さすれば、市民は「本当の人間」になるのだろうか。まして、「国民」という言葉にすり替わっていて、「本当の市民」なる用語が選ばれていたりはしないか。

 あらためて、1年前の日弁連の見解を付記した。しっかりとご参照あれかし。

Drソガ)

 

 

① 大治朋子.「本当の人間になる」.毎日新聞、2023年3月28日、2面、火論.

② 大治朋子. 「法の下の平等」を問う. 毎日新聞、2022年3月1日、2面、火論.

③ 荒中(日本弁護士連合会会長).東京地裁判決を受けて改めて旧優生保護法被害者の被害回復を求める会長声明.Nichibenren.or.jp、2020年7月15日.

④ 荒中(日本弁護士連合会会長).旧優生保護法国賠訴訟の大阪高裁判決を受けて一時金支給法の見直しを求める会長声明.Nichibenren.or.jp、2022年3月3日.