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今週のこの一冊2022-1-(23) JDブックレット5 国際障害者年から40年の軌跡 障害のある人の分岐点 -障害者権利条約に恥をかかせないで―

2022/02/16

今週のこの一冊2022-1-(23)

 

JDブックレット5

国際障害者年から40年の軌跡

障害のある人の分岐点

-障害者権利条約に恥をかかせないで―

藤井克徳. やどかり出版.20211124日発行.138頁.さいたま、1000円+税.

 

 当方は藤井克徳さんに三度ご来仙を賜った。一度目は2006年の勝山館での「主題てんかんのための夕べの集い」だ。「地域で働き生きていくこととは」のご講演を頂戴した。二度目は2020年で、SCAPE

仙台てんかん市民会議で、「Nothing about us, without us」、つまり「私たち抜きに私たちのことを決めないで」をお話しいただいた。幸い「てんかんケア仙台」シリーズにその講演録を所収できている。そして、三度目がこの25日のSCAPE IV-2022だ。COVID-19災禍の第6波の最中だ。VTR録画で、zoomYouTubeLiveでご登壇いただいた。テーマは「障害児者の生涯ー地域で生きていくこととは」という壮大なテーマだ。総合テーマが「障害児者の生涯伴走ケアを地域完熟へ」で壮大ながら茫漠としているので、ご苦労をおかけした。

仙台てんかん市民会議SCAPEは、毎年2月の第2月曜日に開催される国際てんかんデイIEDに、この日はてんかんの聖徒聖ヴァレンタインデイとなるが、仙台の地から呼応する会議である。この会議の哲学とこれから背負うであろう具体的任務の実際を語るに藤井ほどの人は探せない。加えて、「障害のある人の今昔ー障害者権利条約を宮城県/仙台市のすみずみに」を副題として頂戴した。とはいえ、宮城県だの仙台市だのと言われて途方に暮れたのが実際だ。SCAPE仙台てんかん市民会議も、仙台なので、そうなるらしいのでそういう名にしている。(突然使うが)私たちに、県だの市だのという、そうなんだよねというほのぼのした生の実感があるものは全くないので、極めて奇妙で、背中がこそばゆい。

 その藤井さんが、「障害者権利条約に恥をかかせないで」なるサブタイトルをつけたブックレット、とはいえ、立派なご本だが、を表した。昭和から平成の数十年間の長きにわたる、このクニの障害者問題の核心を拾い集め、まとめておられ、やむなく医者の道などに迷い込んだ当方から見れば、唐突ながらの例えだが、一途な人生本ともなる。その中身は本書を手に取り、是非にでもじっくりとお読みいただきたい。

ありがたかったのは、より実際的な、88ページからの年表(障害者施策の動向、JD等の主な活動、社会保障/社旗福祉の動向ー事件を含む、国際的な動向)だ。藤井のものだからこそ、選択された項目に従えば間違いのない手引き資料、道標べとなる。

138ページの小本であるので、逆には、どの言説も全てためになるので、一行一行ゆっくりゆっくりお読みあれかし。この紹介では「あとがきに代えて」の一部を拝借する。彼はこう述べる。

五点目は、新たな結集軸の準備、そして新たな運動の創造です。交際障害者年と権利条約は、それぞれの障害分野の国際的な拠り所となりました。。。。。。。。これらを例えて言うと北極星のようなもので、闇夜に燦然と輝き、進むべき方向性を指し示してくれています。。。。。。。。。権利条約が批准されても、障害者の置かれている実態や将来不安が解消されたわけではありません。問われるのは、権利条約で示された深い目標にふさわしい新たな運動の方法や形態を生み出すことです。そのための視座やヒントは、障害者の実態とニーズに学ぶことです。本書で掲げたターニングポイントに潜んでいるように思います

なお、副題の「障害者権利条約に恥をかかせないで」の説明は、表紙裏にある、ふじいかつのり、の詩にある。「日本のみなさん、わたしに恥をかかせないで」。

これ以上に、意味深長な悲しみ、はないのではと、しみじみ想う。

                       (Drソガ)