寂聴さん、ついに逝く③
ベーテルブログ
2022/01/01
水の声
瀬戸内寂聴
文藝春秋(1992年2月号所収). 2022. 文藝春秋:第100巻第1号、89頁、巻頭随筆、百周年記念傑作選.2021年12月10日発行、東京、1200円.
元朝参りの混雑を避け、12月31日、榴岡天満宮に向かった。当方は少なくも不信心者と呼ばれるほどではないほど、お詣りには努める。既に明日のため、境内は屋台の準備に忙しい。参拝者はちらほらと。当方は何かの御礼を唱え、新年2022年のお祈りをそれこそ幾つも念ずる。
数年前から、帰り道にあるコンビニエンスストアに立ち寄ることになっている。ついでに、とある漫画本を買い加えてしまうこととなっている。今回はそのまたついでに、創刊100周年記念号だよと赤字で示す文藝春秋誌を買い求めた。下重暁子が寂聴について文章をしたためていることを知っていたこともあるが、当方にとって馴染みが薄い雑誌(とはいえ604頁もある)ではある。
そこに、寂聴が紹介されているのを発見した。悪くない。当方と触れるので、残そう。
水の声が聞きたい。故郷の家の裏の小川の
水の声が。死を待つだけの老人がうわ言をい
った。ひ孫の少女がその日から、老人の枕元
に座り、赤い玩具のバケツの水を掬いあげて
は落しはじめた。少女がつくった小川の囁
き。貝殻のように薄い少女の掌の窪みから、
水はきらきら輝きながらくり返しバケツに落
ちていく。さらさらと、さらさらさらとひっ
そりと、ひがな一日さらさらと。
寂聴の原文が何であるのかは、文春社の資料保管倉にあるだろうし、寂聴の全著作集なるものが拾っていれば、紐解けるだろうが、そんな時間は当方には無いのが残念だ。言えるのは、この詩が単に老いのために死んでいく死床を描写しているのではないことだけは確かだ。
なお、この詩はベーテル誕生の1992年に発表されている。
(Drソガ)