寂聴さん、ついに逝く②
ベーテルブログ
今週のこの一言ありがとう9/2021(10)
2021/12/20
御山のひとりに深き花の闇
1) 川上弘美.瀬戸内寂聴の文学.朝日新聞、2021年12月18日、第25面.
2) 瀬戸内寂聴句集ひとり. 2017年5月15日発行.深夜叢書社、東京、2000円
COVID-19災禍のため、当方もSNSを開くのが習慣となり、夕方のわずかの休憩時に今日の感染者数を追う。ご命日が知られてから、SNS上には寂聴さんの話題が毎日のように載る。なかにはデジタル版や見たことも手に取ったこともない情報源のものもある。選挙で敗れた辻本清美議員が前回敗れた時に寂聴庵に一月も籠もったなどどいうほほえましいものまである。
当方は宗教にも、芸術界にも、ましてや芸能界にも通じないが、いずれ寂聴が作家であり、小説家であることと「源氏物語」の現代語訳者であることぐらいは言える。この世を解脱するために、中尊寺の今東光に身を委ね私得僧ともなった。だから、本職に加えて大変な知識人であることも著書の幾つかに披露されており、当方なりに読んでいる。なお、当方には異界となるが、権大僧正、従三位だそうだ。
さて、今回、川上弘美が朝日新聞に寂聴文学を紐解いた文章を載せ、寂聴の文体の変容を教えてくれている。三谷晴美や三谷佐和子時代までを含むかは知られないが、瀬戸内晴美を経過して寂聴として生きた彼女の人生の究極を、川上は、書くことで「自身の軛―書いて解き放った」としている。深くは通ずることはできない当方にも分かりやすい見出し語となっている。
当方の手許に、「ひとり」という句集がある。寂聴が第6回星野立子賞を受賞したものだ。私は星野を知らないし、その名の受賞が何を意味するのかも知らない。本帯に「自らの孤独を見つめ、明滅するいのちの不思議にこころを震わせる」とある。
句の数は95。さも彼女らしく句は詠まれたが、それだけでは当方にはしっくりの読後感がない。後編に、なぜ本を読むって楽しいのかとなるエッセイ集がついていて、助かった。一気に読んでしまう。
さて、彼女は、一遍上人の次の言葉と歌が彼女のいのちの護符であったと書き残した。
「・・・・・・生ぜしもひとりなり、死するも独りなり、されば人と共に住するも独りなり、そひはつべき人なきゆえなり」。
そして、「おのづからあひあふときもわかれてもひとりはいつもひとりなりけり」。
この句集、含蓄深すぎるが、本帯にみづからお選びであろう七句があるので、以外に当方好みで以下の三首を紹介する。
「戦火やみ雛の顔の白さかな」
「菜の花や神の渡りし海昏く」
「ろまんちつく街道旅の涯に野火」
なお、最後の句、
「御山のひとりに深き花の闇」
は秀逸であり、ご自分の形容の一つと解されるであろう。
(Drソガ)