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今週のこの一言にありがとう(2020/12/12) 現実主義、実は思い違い

現実主義、実は思い違い

  平野啓一郎(談)、佐々木亮(聞き手)

  朝日新聞128日(火)、13

オピニオン&フォーラム・「核禁条約 世界変えるか」・耕論

 

  20年かけても読み切らない本がある。平野啓一郎の「葬送」(全二巻、総709頁)だ。新潮社、2002830日初版だ。平野は京大法学部出身で1999年、22歳、つまり最年少受賞となるが、小説「日蝕」で芥川賞を得た神童だ。20年前、当方は葬送の初章:18491030日(ショパン没後2週経過)(一)を読みながら佇立していた。11行に全て赤線を引いては立ち止まっていた。遂に39頁からの(二)に進めなかった。

アルチュール・ランボーの詩がそうであった。何も知らずの異国(フランス)のランボーが学生時代に表した作品の、もしかして日本語訳にする事自体が挑戦的すぎる詩を恰も訳知り顔に読めた。そんな乱暴が通じたのは若者だったからだ。若者ならば何故か共に詠えるのだ。

 その平野がネットでうるさい。橋下徹には及ばないが、一度は首相になり真贋を見極めたい小沢一郎ぐらいには登場する。ノーベル賞を授けられておかしくないほどの平野ほどの日本の逸材が、なぜアベ政治などに積極的に発表しすぎるのか、が不思議でたまらなかった。

 答えは簡単なようで、平野が人間に真剣だからだ。国家や地域代表者(議員がなどの政治家)、経済・学問・文化利益代表者(学者などの専門家)、そしてあろう事か平民一人一人(あなたとわたし、だが障害児者を代表しない)が、みなうちそろって「国家利益の代弁者」のようにしか振る舞わなくなった。そんなふうに成り下がった日本人に愛想を尽かさず、若い人たちだけが特権的に抱ける強い危機感、を共にしようとしている。まだ45歳の平野は、正しいと思ったことをはっきり言う「カッコよさ」が世界の若者のトレンドとなってきている、と言うのだ。彼の直感を疑う理由はないので、嬉しい。